みんな平気そうな顔をしているけれど、なんだか気分が悪くなって来た。


「そうだな。そろそろショッピングモールも開店時間だ」


知樹がそう言い、池に背を向けた。


「なぁんだ、なんにもなかったなぁ」


直弘はどこか不満そうな声を上げている。


全員で歩道へ戻ろうとした、その瞬間だった。


アアアアアアアアアアア!!


どこからともなく、奇声とも泣き声とも聞こえる声が響いて来たのだ。


その声の大きさにあたしは思わず立ち止まり、両耳を塞いだ。


前を行く知樹も耳を塞いで何事かと周囲を確認している。


美奈と直弘も同じ反応だった。


その声は数十秒間あたしたちの鼓膜を揺るがし、そして何事もなかったかのように消えて行った。


「今のは……?」


直弘の腕にすがりつくようにして美奈が聞く。


「わからない。みんな、同じ声が聞こえたのか?」


直弘の質問に、あたしは自分が聞こえた声を説明した。