そう言い、美奈は首を傾げた。


地図上ではそうなっているけれど、実際みた感じだと波は立っていないし、人の顔があるとは思えなかった。


でも……。


ここへ来た瞬間から、あたしは奇妙な寒気を感じていた。


背筋を冷たい指先で撫でられているような感覚。


ゾクリと体を震わせて、あたしは数歩後ずさりをした。


「恵梨佳、怖いなら知樹に抱きつくチャンスだよ?」


怯えているあたしに気が付いた美奈が小声でそう言って来た。


あたしはチラリと知樹を見る。


知樹は池の中を覗き込むようにして見つめていた。


知樹は怖くないんだろうか?


この、妙な雰囲気をなにも感じないんだろうか?


そう思っていた時だった。


「結構怖いねぇ」


美奈がそう言い、直弘に近づいて行くのがわかった。