そうこうしている間に、館下先生が横倒しに倒れ込んだ。


全身の力が抜け、口から泡を吹いている。


「救急車!」


誰かが叫ぶ声が聞こえて来る。


ここで死なれたら、あの池にいる人物についてなにもわからないままだ!


「館下先生しっかりして!」


倒れ込んだ先生の体を揺らして言った、その時だった……。


先生のジャージのポケットから、1枚の写真が落ちた。


咄嗟にそれに視線が向かう。


最初に妙だと感じたのは、その写真が白黒だったからだ。


先生の子供時代でも、カラー写真が主流になっていたはずだ。


次に妙だと感じたのは、その写真が白黒のモヤのようなものしか写っていなかったからだ。


あたしは自然と写真を手に取り、そしてようやく理解した。


これはお腹の中にいる赤ん坊のエコー写真なのだ。


「なんでこんなものが……?」


奥さんが妊娠して、嬉しくて持っていたのだろうか?


そう考えた次の瞬間、今まで館下先生の首に巻き付いていたモヤがスッと消えて、あの声もまるで嘘のように消えて行ったのだった……。