……ばか。ばかみたいだ。




どんな服を着て行こうか悩んでいた昨日の夜の自分も。

デートみたいだなんてはしゃいでいた今朝の私も。

小さな仕草ひとつひとつに好きって思ってしまった、さっきの私も。



「そんなに好きなのかぁ」と、真緒くんが困ったように呟く。



「じゃあ羽瑠ちゃん、俺にしようよ」



「……だから、」



「……悪いけど、そんなに冗談でもないよ、これ」



珍しく、真剣な顔をする真緒くん。
驚いて顔をあげた私に、へらり、といつもの笑顔に戻る。

……びっくり、した。



しばらく言葉を交わした後に、真緒くんが昔の話を始めた。


「──俺たちの家、小さい頃に両親が離婚して」



ぽつり、と話しはじめた真緒くんに、俯いていた顔を上げる。