「……ありがと、」




少し前を歩く永遠くん。

どんな表情をしているのかなんて見えなかったけれど、小さな声が私の耳に届いた。



たまらなく愛おしくなって、大きいのに消えてしまいそうな背中を思いっきりぎゅっと抱きしめなくなって。

その衝動を必死に抑えて、彼の少しだけ後ろを歩く。


月が綺麗で、とても綺麗で。
月の光に照らされて透ける、永遠くんのミルクティー色の髪が綺麗で。


なんか、儚くて消えそうな、本当の王子様みたいで。




「っ、永遠くん」

「なに」

「……月に、帰っちゃだめだよ」

「はぁ?何言ってんだお前」




とびきり口の悪い王子様。

冷たくて、ぶっきらぼうで、猫被りで、そして本当は、被った猫よりもっと優しい王子様。



消えないで、月に帰ったりしないで。
私の隣に、いてよ。