5話「恋をすると美しく輝くお姫様」




 男に手を引かれて到着したのは、小さなbarだった。
 アンティーク調の彫が入った家具が並び、店内の奥にはカウンター。天井から透明なグラスが逆さになってぶら下がっている。

 店内のテーブルや椅子も家具と同じ色合いで出来ており落ち着いた雰囲気があった。照明は少し落とされており、オレンジ色の光りが温かさを感じさせてくれていた。


 「カウンター座って。何かすぐ作る」
 「あ、ありがとうございます………」


 男は店の鍵を開けて、すぐにカウンター奥に入った。手を洗った後、レースのカーテンの向こうに入ってしまう。その後、包丁で何かを切る音やコンロや換気扇をつける音が聞こえた。彼が何か料理をしているのだと思い、キョロキョロと店内を見渡した。
 先ほど店を開けたばかりなので、もちろん客はいない。この店には自分と先ほど会ったばかりの彼だけなのだと彩華は少し緊張してしまう。


 「おまえ、何飲む?」
 「へっっ!?」


 料理をしていたはずの彼がいつの間にかカウンターに戻って、突然声を掛けられたので、彩華は驚き変な声を出してしまった。