祈夜ルート 15話「沢山のプレゼント」



 シャシャッという、鉛筆と紙が擦れる音が小さく、そしてリズムよく響いている。
 同じ体勢で座り続けるというのも、辛かったけれど、その音が心地よく感じると自然と体の痛さも気にならなくなってきた。

 彩華は改めて自分が置かれている状況を見ると、とても大胆な事をしているな、と自分でも思っていた。仕事のためとはいえ、昼間の明るい時間帯に全裸の姿でソファに座り、彼のデッサンのモデルをしているのだ。
 自分から申し出たものの、非日常的な状況に何だか夢のようだった。

 彼の視線に緊張したのも始めだけで、真剣な表情を見られるのが嬉しかったので、もっと見て欲しいとさえと思った。
 

 あれから何回かポーズを変えており、今はソファの上で寝そべっていた。そうなると、彼の顔が見えなくなってしまったので、彩華にとってはとまらなる。
 鉛筆が走る音だけが聞こえ、それが心地よくなりすぎて、ついに彩華はウトウトとしてしまう。


 「彩華?………眠い?」
 「ん………だいじょーぶ………」
 「全然大丈夫そうじゃないけど。後少しで終わる」
 「うん……」 
 「少し寝てもいいけど……風邪ひくかな……」
 「寝ないから………」
 「………急いで終わらせる」


 クスクスと笑いながらそういう祈夜の声を、彩華はほとんど夢の中で聞いていたのだった。
 彼はどんな風に自分を描いてくれているのだろうか。恥ずかしい経験だったけれど、彼の役に立てただろうか。

 彩華はこのモデルが終わった後にやっと彼に触れられると思うと、顔がニヤけてしまうのがわかった。けれど、それを止めることが出来ないまま瞼をゆっくりと閉じたのだった。