祈夜ルート 14話「デッサン」
愛しい人が好きな事に本気で頑張っている。
そんな姿を見たら当たり前だ。
そう思いながらも、何でこんな事を言ってしまったのだろうと、彩華は後悔してしまっていた。
「………え、本当にいいのか?」
「え、あ、待って!!祈夜くんの役に立ちたいって思ったんだけど……。けど、ほらキャラのイメージと違うかもしれないしね!そんな綺麗なお話ならモデルさんとか参考にした方がいいかもしれないよ。ほら、グラビアとかさ!」
「………この話は、おまえと付き合いはじめてから考えたものだよ。彩華の事、考えながら作ったらから………」
「え………」
「って、気持ち悪いよな。自分の恋人のイメージを漫画に出してしかもヌードなんて………。でも、何かいいなって思ったんだ。お前みたいな人を描いてる男が、無心で絵を描いてるところ。好きな人の事描きたくなるもんだし」
苦笑しながら祈夜はそう言って彩華の頬に口づけをした。彩華が見上げる彼の表情はどこか切なくて、大人っぽく見える。
そんな彼を見ていたら、彩華の方がドキドキしてしまう。
「………そんな事言われたら、断れないよ」
「本当にいいのか?」
「うん……….モデルなんてやった事ないし、上手く出来ないかもしれないけど、祈夜くんが絵を描いてるところ見てみたいから………」
「………ありがとう、彩華。本当に嬉しいよ」
そう言って彩華を包むように抱きしめた彼が満面の笑みを浮かべていたのを見て、彩華は彼が喜んでくれるならと、引き受けた事をすぐに「よかった」と思えたのだった。