祈夜ルート 13話「大きいのがお好き?」
彩華の手の中にあるモノ。
それは、彩華が手にした事がないものだった。
表紙には、はだけた服を身に纏い潤んだ瞳でスーツ姿の男性を見つめる女性のイラストが描かれていた。白い肌が見え、ふっくらとした胸元も描かれているのだ。
「これって………エッチな漫画本だよ…………ね?」
彩華はキョロキョロと周りを見て、まだ祈夜が戻ってくる気配がない事を確認してから、その漫画本の中身をゆっくりと捲る。すると、男女が絡み合うシーンが数多く描かれているのがわかった。彩華は、こういう内容の本をほとんど見たことがなかっただけに、自分の顔が赤くなるのがわかった。しかも、恋人の家でエッチな漫画を読んでいるというのも、なかなか経験しない事だ。
紙袋の中身は全てそれで、彩華は驚いてしまう。表紙に書かれている作者の名前が祈夜のものではないけれど、年齢指定の物を描く時は名前を変える人もいると聞いた事がある。それに、手元にあるモノ全てが、「イリヤ」の漫画とは全く絵柄が違うように感じられた。素人目線なのでわからないが、祈夜が描いたものではないのではないか。彩華はそう感じていた。
「じゃあ、これって………祈夜の趣味なのかな……」
人には言えない趣味もある。それはよくわかる。男の人がこういうモノを見るのも仕方がない事だともわかる。女性だって、好きな人はいるのだから。
けれど、紙袋の中に入っていた漫画を見て、彩華はある事に気づいていた。それがどうも気になり、悲しくもなり切なくもなっていた。