祈夜ルート 10話「偶然の秘密」




 「やっぱり喧嘩なんかする女はダメって事なのかな!?」


 彩華は、とある居酒屋の個室に居た。
 最近の悩みのせいか、いつもよりお酒を飲んでしまい、しゃべるのが楽しくなり、気持ちよささえも感じてしまう。そのためか、言葉が止まらなくなってしまっていた。
 その声を受け止めているのは、もちろん茉莉だ。少しうんざりした顔をしつつも、しっかりと最後まで話を聞いてくれるところが優しい。


 「ダメじゃないでしょ。だって、喜んでくれたんでしょ?祈夜くん」
 「そうだけど。……考えてみれば、その日以降は何だか素っ気ないというか、会ってもすぐに帰っちゃうというか………」
 「お泊まりしてないんだ」
 「う………うん………」
 「構って貰えないから寂しいんだ。年上の余裕全くないねー」


 ため息をつきながら、ニヤニヤと笑いビールを飲む茉莉に彩華がじっとりとした重い視線を送った。


 「余裕なんてあるはずないよ。……初めての好きな人だし、恋人だよ?どうしていいのかわからないよ」


 彩華は、俯きながら弱々しくそう言葉をこぼした。