祈夜ルート 2話「はにかむ赤い顔」
葵羽と会ってからしばらく経った。
彩華は、あの日からどうしようもなく気分が下がってしまい、仕事が終わるといつも以上にぐったりとしてしまった。子どもの前では笑顔を作り、いつも通りにしようと徹底していた。その反動から疲れが増してしまうようだった。
そのため、もちろん祈夜の店には行けるはずもなかった。
それに、葵羽の告白を断ったと行ってすぐに彼の元に行くのも何だか良くないような気がしたのだ。
彩華は職場から駅へと向かう道と店へと向かう道がわかれる場所で、いつも見えない店の方を1度眺めた後に、家へと帰っていく。
彼は何をしているのだろうか?寒くなったけれど、風邪などひいていないだろうか?
そんな事を思いながら、彩華は彼への想いをめぐらしていた。
そんな日々が続いていたある日。
彼からの連絡は突然やってきた。
『今日、店来れるか?』
祈夜からのメッセージはただそれだけだった。けれど、とても彼らしいと思う。
彩華は「仕事終わりにお邪魔するね」と返事をした。今は昼休みの時間。彼からすぐに『待ってる』と返事がかえってくる。
たったそれだけのやり取り。
それなのに、久しぶりに「楽しみ」という感覚を覚え、彩華は自分が自然と笑顔になれている事に気づいたのだった。
そして、残業もほとんどせずに、化粧直しをいつもよりしっかり行って足早に店へと向かったのだった。