3話「神様への舞」




 彩華は葵羽に言われた通りに、少し温かい服装をしてその日は出掛けた。
 いつも仕事帰りに着ないような服を着て、メイクも仕事では使えないラメが入ったアイシャドウやリップを使って華やかにした。髪も時間をかけて綺麗にしてみた。
 デートに行く前はこんな気分なのだろうか。彩華はそんな風に思いながら、神社のお祭りに行く準備をしていた。

 彩華が家を出る時はまだ明るかったけれど、神社に到着頃には、街は夕焼け色に染まり始めていた。
 秋のお祭りには参加したことがないので、どのようなお祭りなのかはわからない。そこまで着飾るわけではなかったけれど、丈が長いワンピースにジャケットを合わせた服装にした。
 こんな風に着飾った時に葵羽に会うのは初めてなので、少し気恥ずかしくなってしまう。
 
 
 少し緊張した気持ちで、神社の石段を上がっていく。すると、正面に米や野菜、果物がお供えされていた。
 そして、その前では神楽鈴と扇を持って立っている人がいた。
 神社の正装のようで頭には衣冠、鮮やかな模様が入った紺色の衣と紫の袴が見えた。
 目に入ったのは、纏められた髪だった。いつも見とれてしまうぐらい美しい銀色のような淡い茶色の髪だ。それを見て中央に立っているのが葵羽だとやっとわかった。