葵羽ルート 13話「仮面の男」
葵羽から貰ったチケットには、少し離れた街にある大きな会場だった。その場所はコンサートやミュージカルなどが行われる施設になっていた。
そして、その日はクリスマスの数日前だった。
アーティスト名は「エリック」と書いてあった。その人の事はわからなかったけれど、クリスマススペシャルコンサートと書いてあるので、きっと音楽関係なのだろうと思った。
それにアーティストを調べようと検索もしてみたけれど、エリックについては公式HPはあるものの会員限定サイトのみで、中身を見ることは出来なかった。
「謎のコンサートだなぁー」
彩華はベットに横になりながら、そのチケットを眺めていた。
彼がこのコンサートで何を伝えたいのか。彩華にはわからない。けれど、葵羽が自分に向かって1歩近づいてくれたのは理解する事が出来た。
葵羽が自分から動いてくれる事が、彩華は嬉しかった。きっと、彼は他人が自分に求めている事には敏感に気づくことが出きるのだろう。だからこそ、些細な変化に気がつく。だからこそ、彩華は沢山、彼に甘えさせてもらっていた。
では、彼は彩華に何を求めていたのだろうか?
きっと、彼はまだ彩華に本当の気持ちを出していないんじゃないかと思えた。
「この日、本当の葵羽さんに会えるんだよね」
そう一人呟き、彩華はチケットを何度も見つめた。
期待もあれば不安もある。
けれど、彩華は彼を信じると決めたのだ。
この日まで、彩華は待とうと決め、彼と繋がるチケットを大切にサイドテーブルにしまったのだった。