「まずい知らせがある」


表情を曇らせた雪男が朔の元へ持って来た一通の文は、誰の表情をも曇らせる内容のものとなっていた。

目を通した朔は、それを雪男の胸元に押し付けて立ち上がった。


「兄さん」


「輝夜、お前はこうなるのを分かっていたか?」


「大体は。兄さん、彼らに任せておいた方がいいですよ、私たちが深く関わるとろくなことにならない気がしますから」


「分かっている」


分かってはいても、もうこれ以上弟に不憫な思いをさせることは承服できない。

ややぎらついた目で部屋を出て行った朔を見送った雪男と輝夜が素早く目配せすると、暴走する朔の制止役も兼ねている雪男が後を追って出て行った。


「鬼灯様…」


「今はまだ逸れていません。逸れた時は関わるしかない。今は」


今は、と強調して目を伏せる輝夜の手を柚葉が握った頃、暁に稽古をつけていた天満の元を訪れた朔は、目が合うなり嫌な予感がして動きを止めた天満に手招きをした。


「なんだろう、嫌な予感がするんだけど。雛乃さん、暁をよろしく」


「あ、はい」


雛乃もまた嫌な予感がして眉を潜めていたが、朔に歩み寄った天満は、雪男が差し出してきた文を受け取って朔の表情を窺った。


「なん…ですか?」


「見れば分かる」


「僕に何か関係が?」


もう朔は答えない。

恐る恐る文を開いた天満は、書かれてあった内容を見て眉を潜めた。

それには起きてほしくなかったことが書かれてあり、そして雛乃に関わることが書かれてあった。


「朔兄、これ…」


「備えなければならない。だが天満、心配するな。俺が始末をつける」


「でも…」


「お前は油断せず雛乃を守っていればいい。できるな?」


――やらなければならない。

絶対に絶対に、次こそは。