翌朝百鬼夜行から戻って来た朔と輝夜、雪男で雛乃について語り合った。

事の経緯を全て明かした天満の話を聞いた面々は、最高の酒の肴をあてにいい気分でぐびぐび飲んでいた。


「そうか、なら祝言の日を決めないと」


「あの…まだ告白してないですし、されてもないです。意識されてる程度ですよ」


「そうだとしても、今まで男の手なんか触れたことがなかった雛乃に唯一触れられるのはお前だけだし、気兼ねする必要もない。早く告白して雛乃と所帯を持て」


「そうなると、旅に出ている父様と母様にもおいで頂かないと。きっと喜びますよ」


現在、先代の十六夜と妻の息吹は旅に出ていて所在が分からなかった。

時々文が届き、時々土産物が届く。

元気にやっているのが息吹の文面から分かるため、こちらから所在を調べるようなことはしていない。


「言っておきますけど、僕は朔兄や輝兄みたいにぐいぐいいける気質ではないんです。今頑張ってますからそっとしておいて下さいね」


「お前みたいな顔がいい奴を袖にする女なんか居ねえんだから、気張っていけよ」


「じゃあ雪男に女の口説き方でも伝授してもらおうかな」


「や、それは勘弁して下さい朧が怖いんで」


雛菊は生涯報われぬ日々の末に命を落とした。

あの時の天満の悲痛な叫び、雛菊の無念な思い――誰もが忘れられず、今も天満の幸せを祈って背中を押してやらんと努めていた。


「頑張りますよ、僕なりに」


兄たちに励まされるように肩を叩かれたが――

この後、天満は決断を迫られることとなる。