もっと反省したいから詳細を話してほしい――?

もちろんなにひとつ欠けることなく覚えているけれど、それを天満に説明するのはさすがに恥ずかしい。

しかしまっすぐな目で見つめてくるその誠意ある様に根負けした雛乃は、数分沈黙した後、ぽつぽつと話し始めた。


「天様は…私を‟雛ちゃん”と呼びました」


「え…そうなんだ…はい…」


「手を引っ張られて…その…お布団の中に連れ込まれて……お…お…」


「お…?」


「押し倒されました…」


――生涯雛菊としか閨を共にしたことがない天満は、そんな同意のない無理強いのようなことはしたことがなかった。

だが心底恥ずかしそうにそう告げた雛乃が嘘をついているとも思えず、またぺこり。


「ごめんなさい」


「い、いえ…。それでその…噛みつかれました」


「僕…なにか言ってた?」


天満はうわ言のように‟今度こそ離さない”と言っていた。

雛ちゃんとは自分のことだが、‟今度こそ”と言われるほど共に年月を歩んではいない。

きっと夢の中で違う記憶と結びついたのだろうと決めつけていた雛乃は、ようやく天満に向き直って同じように頭を下げた。


「いえ、特に何も言ってませんでしたよ。私も今までお話せずすみませんでした。きっと覚えていないだろうと思って」


「覚えてはいなかったけど、鬼族にとっては冗談では済まされない行為だよ。僕は半妖だけど、やっちゃいけないことだっていうのは分かってる。いくら雛乃さんが嫁に行くつもりはないと言ってても、責任は取らないと」


「せ…責任!?」


「うん。僕にどうしてほしい?殴ってもいいし、おねだりでもいいし、でも無視とか避けられるのは悲しいから、できたらやめてほしい」


――願い事なんて、ない。

あなたが傍に居てくれるのなら。