朔たちにとってふたりの仲がどうなっているのかは最も興味のあることだった。

天満は元々女に超のつく奥手だし、兄弟の中で異例中の異例。

雛菊だけが唯一天満にとって心の許せた女であり、失って以降また他の女には目をくれることなく暁の世話をしてきた。


「ところでお前は本当に俺の弟か?」


「えっ、突然なんですか?」


「俺の弟ならうじうじしたりしないし、押し迫って熱く口説くと思うが」


百鬼夜行から戻って来た朔と共に相伴にあやかっていた天満は、ふうと息をついて辺りに視線をやり、誰も居ないことを確認してぼそりと呟いた。


「なんだか避けられている気がするんです」


「誰が。雛乃か?」


「はい。話しかければ答えてくれますけど、なんかこう…いつもと違うんですよね。思えばあの首巻きをしだすようになってから」


そういえば、と明けてきた空を見上げた朔は、星のような妖気が瞬くやや切れ長の美しい目で天満を撫でた。


「虫刺されと聞いている。違うのか?」


「さあ…その話題をするとまた避けるように会話を切り上げて居なくなるんです。なんでしょう?」


――女に奥手ということは、女の心の機微にも疎い。

首巻きには必ず何かの秘密があると踏んだ朔は、豪快に酒を仰いで飲むと、いつも雛乃に話しかけたそうにしている妻を思って笑った。


「女たちの出番だな。芙蓉は引っ込み思案だから雛乃に話しかけたくともできず歯がゆく思っているらしいから、差し向けよう」


「でもいいんでしょうか、雛ちゃん嫌がるんじゃ…」


「お前が気にならないのならやめておく」


「気になります」


ふたりでにかっと笑った兄弟は、肩を突き合いながら悪巧みをした。