天満の女嫌い――曰はく女が苦手であることは周知の事実であり、徹底的だった。

まず絶対に目を合わせない。

目を合わせないどころか触れることさえほとんどない。

芙蓉や柚葉に関してはまだ友好的だったものの、目が合うことはあまりなかった。

天満と目を合わせて話をすることができる女は、暁だけだ。


「そろそろだと思うんです。何故か」


「何が」


「雛ちゃんと出会うのが。なんでそう思うのか分からないんですけど…そう思います」


百鬼夜行から戻って来た朔を雪男と共に出迎えた天満は、ふたりで縁側で酒を飲みながらそう語った。

お前が言うならそうなんだろうな、と返した朔は、ぽんから受け取った文の話をした。


「狐狸から文を受け取った。お祖父様の式神で飛ばすから返事はすぐだと思う」


「ぽんは暁によく尽くしてくれました。その…雛乃という娘さんを預かる期間はどうしますか?」


「狐狸によれば不遇な人生らしい。百鬼として使えるかどうか見極めるが、そうでないならしばらく預かって働く場所を斡旋してやろうと思う」


「ありがとうございます」


朔がちゃんと考えてくれていることに安心した天満は、庭のあちこちから感じる熱い視線に辟易してため息をついた。

天満を好いている百鬼は多く、しかも純粋に恋している者が多いから性質が悪い。

天満自身が堅物で純粋なため、天満に惚れている女たちも同じく熱烈な者が多いが、直接告白をしてくる者はほとんどなく、ああして物陰から熱心に見つめる者が多い。


「あれらに応えてやるつもりはないんだな?」


「や、ないですよ、ないない。さっきそろそろ雛ちゃんと出会うかもって言ったばかりじゃないですか、もう」


「ふふ、冗談だ」


透き通るような美貌に苦笑が滲み、朔もまた満面の笑みで弟の頭を撫で回した。