自分が時々見る走馬灯のような光景を天満に話した方がいいのだろうか?

詳細に語って、一体これは…‟誰の‟見ている光景なのか、訊いてみた方がいいのだろうか?

とかくこの鬼頭という一族は奇異な体験をした者が多く、自分ではない何者かの光景を見たこと自体が珍しくないのかも、と言ってほしい。


「夢…?それはどんな…」


「…今…天様がお話されたように、私じゃない方が天様と一緒に炬燵で蜜柑を食べたり…どこか花が咲いている野原で散歩したり…」


――明らかに、天満の顔色が変わった。

一瞬腰を浮かしたため、その鍛え抜かれた上半身がさらに見えてしまって思わず両手で口を覆うと、天満ははっとしてまた湯に沈んだ。


「ごめん…。雛ちゃん、それはいつ頃から見てるの?」


「こちらでお世話になるようになってからです。天様、これは何なんですか?」


天満は常に静謐に満たされているかのような静けさを宿した目をしていた。

だがこの時ばかりは目を見張り、驚きに満ちた表情で凝視してきていた。

これは何かある――そう直感した雛乃は、戸惑いながらも天満に近付き、手を伸ばせば触れる距離まで詰め寄った。


「何か…知っているんですね?」


「僕自身が知っていることは少ないんだ。だから、こういう不思議な体験について詳しいお祖父様に相談してみるから、待ってもらえるかな」


「はい、それはもちろん…。無理を言ってすみません」


無理じゃないよ、と言って微笑んだ天満と目が合って思わずぱっと目を逸らした雛乃は、少し続いた沈黙に耐えられなくなり、話題を変えた。


「そっ、そう言えば…若様は無事遠野に着いたでしょうか」


「吉祥のこと?父親が連行していったんだし、ちゃんと着いたんじゃないかな。…あんなに嫌ってたのに、心配?」


「一応あのお家の方々にはお世話になりましたから。若様は我が儘で癇癪持ちで、私が男の方と話すとすぐ機嫌が悪くなって…」


「他の男の話をされて機嫌が悪くならないわけがないよ。僕も例外じゃないんだけど」


「え」


声を上げた瞬間――雛乃は、いつの間にか天満の腕の中に居た。