いかにも僕がいなかったのが、不機嫌の原因だったと言わんばかりの感じがした。
「すみません」と、一言わびの言葉を入れ、すでに席についていた宮村孝之の隣に静かに座った。
「おせっーぞ亜崎。おかげで部長ご機嫌斜め状態だぞ」
「すまん、最後の講義が伸びてしまって」
「ふ、まぁいいや。ようやくお前が来たから部長も少しは機嫌よくなったんじゃないかな」
「おいおい、何で俺で部長の機嫌が左右されるんだよ」
「まったくお前は相変わらず疎いなぁ。部長がいつもお前に目配りしているの気が付かねぇのかよ。つまりだなぁ……そういう事だよ」
「そういう事だって?」
「お前わざと言っている? まぁいいや、それより聞いたぞ。お前、教養学部の学棟まで行ったんだってな。そこで女ともめてたそうじゃないか。お前にしては珍しいうわさが流れているぞ」
「あ、いや、それは……」