「彼女なんていませんよ」

那月さんは少し驚いたように
「嘘! 隠さなくてもいいでしょ。亜崎さん本当はいるんでしょ」
「嘘じゃないです。本当に彼女なんていません」

「それだぁ!」

「え、彼女がいないことと何か関係があるんですか?」

「大ありじゃん、だって主人公の女の子、何となく影薄いような気がしてたんだぁ。リアルティにかけるというかさぁ。ほんと、空想の中にいるような感じで、本当にこんな子いたら消えてなくなるんじゃないかって思えた」

消えてなくなるような女の子。

確かに言われてみれば主人公の女の子、まぁ、年齢の設定は幼女期から、成人する少し手前までの女性像を描写していたつもりなんだけど、正直僕が想像し得る女性像は幼女期なら何とか描写的には実感、僕の実際の経験というわけではないけど、それなりに描写とか人物像。いわばキャラの特性? と言うべきなのか。そういう部分については迷わず書けていると思う。

しかし、同年代やそれ以上となれば僕の経験力は乏しい。いわば恋愛という部分については(うと)いというべきだろう。

唯一僕が異性、女性として意識して共に時間を過ごした美野里との時は、あまりにも短すぎたのかもしれない。
美野里との付き合いは、本当の恋愛という言葉で表現はできないのかもしれない。

「本当に彼女さんっていないんですか?」