なんであの人あんな焦ってたんだろう。

しかも須川さんって。

巧くん1年生なのになんでさん付けなのかなあ。

「まあいっか」

そう呟き待っていると不意に肩をトンっとされた。

ふりかえると

「あ、巧くん!」

巧くんがいた。

制服姿もかっこいいなあと見とれていたら何も言わずあたしの手を引っ張ってすたすた歩きだした。

「ど、どこいくの?」

何を言っても振り向いてすらくれない。

何かあったのかな。

5分ほど歩いた先の公園で足を止めベンチに座った。

「駅で待っててって言ったのになんできたの?」

優しい目と声でそう聞いてきた。

「あ、あのちょっとしたサプライズじゃないけど早く会いたくて…」

ぎゅ。

「え?」

巧くんが抱きしめてきた。

「かわいいことしてくれて嬉しいけど学校来るまでに何かあったらどうするんだよ」

「あ、ごめんね。そんな大したことはなかったから大丈夫だよ」

「え、その言い方何かあったの?」

体を少し離してじーっと見つめてきた。

「あ、あのねっ、校門の前で男の子に話しかけられただけだよ」

「なんて言われたの?」

「最初は遊びに誘われたけど、巧くんどこにいるか聞こうとしたらすぐどっかいっちゃった」

「そいつの名前聞いた?」

「えっと、たしか山中くんだったかな」

そう言った瞬間、目付きが変わった気がした。

「そっか、何もされてないならよかった」

そう言うとにこっと笑顔を見せてくれた。

「うん、大丈夫だよ」

でもなんかいつもの巧くんじゃない。

何かの違和感をすごく感じる気がした。

そう、これがきっかけであたしは過去のトラウマを思い出す。

描こと重ね合わせた恋愛の始まりだった。