「おはよ、康登」
「ん。はよ。。」
まだ寝ぼけてるこの男は、一応私の彼氏。
七瀬 康登。17歳。高校2年。
この男との出会いは、覚えていない。
そりゃそうである、気が付いたら家族同然に一緒にいた。
私、森本 三月。17歳。高校2年。
飽きるほど一緒にいたはずの康登に恋をしたのは、中学の頃の話。
自覚してからも関係を壊したくなかったから、全く進展しなかった。
そんな私たちの関係を変える出来事が起きたのは、高校2年になったばかりのころ。
康登から告白されて恋人になった。
まあ、そんなこんなで付き合って10ヶ月くらい。
「三月、どこにトリップしてんの?」
「え?」
「いや、今週の日曜、午前練だからどっか行くか。」
康登は、野球部。
私は帰宅部だけどね。
「いいの?」
「俺は行きたいけど、いきたくねえの?」
「行く!」
久しぶりのデートじゃ!!!!
こんなこと言うのもあれだけど、康登はイケメンという部類に入る。
基本無愛想で、野球してる時くらいしか表情豊かにならない。
友達から言わせると、私といるときも表情は豊かになるらしい。
昔からそんな感じだから気が付かないけど、そうならうれしい。
「行きたいとこある?」
「んー、特にないかな。行きたかった水族館はこの前連れて行ってもらったから。」
「この前って言っても正月だけどな。」
今は2月中旬。
部活の忙しい康登とのデートは月1回行ければいい方。
夏とか大会始まってくると2、3か月いけないなんて普通にある。
「部活と三月どっちが大事なの?!デートしたいよう!!
なーんていう子のほうが好き?」
「自分のこと三月なんて呼ばないくせに…
理解ある彼女で助かります。」
普通ならそんなこと言うんだろうけど、なんせ家が隣。
会いたければ、行けばいい。
「野球してる康登見るの好きだから」
「…まじそういうところだと思う。」
「なにを?」
「みぃの好きなところ。」
いきなりのみぃ呼び。
小学校まではみぃちゃんって呼ばれてたけど、中学上がるくらいから三月って呼ぶようになった康登。
付き合ってから、たまにみぃって呼ぶようになった。
そのせいでいちいちドキドキする。
そんな感じで普通に付き合いたてな感じな私たちなんだけど、
幼なじみで、人前でいちゃつくとか絶対にしないから、友達からは
熟年夫婦って言われる。
無愛想でもちゃんと思ってることは言ってくれる康登。
「ちゃんと思ってること言ってくれるよね」
「昔から三月には何でも言ってたしな。」
「中学の時とか告白されたことまで言ってきたもんね。」
「まぁそれはいろいろあって」
それがきっかけで気になりだしたなんて言えないけど…
「今日も部活長いの?」
「多分な。でも明日監督さん出張らしいから、7時過ぎには終わるんじゃね?」
「なら待ってようかな。」
「ん。終わったら迎え行く。」
「久しぶりに一緒に帰れるね」
「分かったから黙ってて…」
照れてる。
多分…いや、絶対。
何となく分かるんだよね。
幼なじみですからね。
学校に着けば、向こうからダッシュしてくる美少女。
「みつきーーー!!おはよ!!」
「おはよう由宇!」
片瀬 由宇。
中学の時転校してきて仲良くなった。
見た目はすっごいおしとやかな美人って感じなんだけど、実際は元気いっぱいの明るい子。
そんなギャップも好きなんだ。
「七瀬くんもおはよう!!」
「はよ。」
「いやー今日もクールだね!」
「クールっていうか無愛想だよね、康登は。」
「あ、哲平くん。おはよう。」
「おはよう、三月ちゃん。」
「哲ちゃん、おはよ!!!」
「おはよゆーちゃん。」
哲ちゃんゆーちゃん、なんて呼び合って、ラブラブ感満載。
2人は中学の卒業式くらいから付き合ってる。
こんなラブラブ感、私と康登には出ない。
いや、人前では出せない、っていうのが正しいか。
実際、2人になれば康登もみぃって呼ぶこともあるし。
2人とも人前でいちゃいちゃってタイプじゃないから、これがちょうどいいんだと思ってる。
「そういえば、三月!今日、私哲ちゃんの部活終わるまで待つから、先帰っていいよ!」
「私も康登待つから一緒に待ってよう!」
哲平くんは、バスケ部。
「ほんと?!よかったぁ!」
1人で7時ごろまで時間潰すの大変だと思ってたけど、由宇いるなら全然苦じゃないや!