書く気力が起きない。
と言ったら、多少語弊があるが、
結果、書かないので大差ない。
私は布団にぼふりと飛び込んだ。
小説の続きを書こうにも、どうにも進めない。
それでも何かを書こうとして、新作に手をつけるが、執筆中の中途半端な作品がたまっていく。
ひどいものは数年前から更新が止まっている。
数人の読者には申し訳ないことをしている。
そう思いながらも、指先はいっこうに文字を産み出す気配はない。
ネタがないわけではない。
内容は決まり、推敲も終わっている。
ただ、そこで止まってしまう。
頭のなかには道筋はできているのに、敷かれたレールの上は歩きたくないとでもいうように、放棄してしまう。
私の脳は中学生か。
あとレールの上は歩くな、あぶないだろ。
自暴自棄に自分に突っ込みをいれる。
いや、このシステムが自分とあっていないのかもしれない。
読者数、閲覧数が自分の才能のなさを、空気が読めない女友達のようにズケズケと突きつけてくる。
いや、あいつは友達じゃないか。
あのグラフもそうだ。開始数ページで10人中9人の割合で読むのをやめたと教えてくれる。
これはあいつだ。
現実ばっかりで可能性を否定する先生。
「はぁ…」
ひと息ついて、目を閉じる。
眠気はない。
体にまとわりつくような重力が、ただひたすらに起き上がれないよう押さえ込んでくる。
起き上がる気力もない。
もう、枯れ果てた。
3つ。
あの3作品で十分に満足してしまった。
予想以上に反響のあった1作品目。
勢いと思いつきで書き上げたら、ファンの数が跳ねた10数番目の作品。
トドメはあれだ。
運営にオススメとして紹介されてしまった30番目くらいの作品。
満たされてしまった。
満足してしまった。
ファンの数、読者数、閲覧数を数分ごとに確認していたようなワクワクする自分はもういない。
増えたら嬉しい。減ったら悲しい。
そんな当たり前の感覚も、繰り返すうちに、ゆっくりと麻痺してしまった。
晴れた日の喜び、
雨の日の悲しみ、
その程度の、すぐに消え去ってしまう感情。
もう、さほど子どもとも言えない。
幼児期の熱量も、
小学生の純粋も、
中学生の無知も、
高校生の疾走も、
知らない間に、
こぼれ落ちていた。
なくしたことに、
気付かなかったのか、
気付かないふりをしたのか、
いまでは、思い出せもしない。
同時期に交流していた書き手たちは、いつの間にか消えていた。
いや、私もほぼ消えているに等しい。
1年に2作品くらいの短編を、思い出したように投下するだけ。
完全にやめどきを失っている。
とりあえず、感謝しよう。
お前には小説家やシナリオライターは無理だと教えてくれたことを。
ただの、自己顕示欲を叶えるための趣味。
満たされない日常を誤魔化すための児戯。
そんなものに過ぎない。