ハッとして、頭を横にブンブン振る。
だめ。
思い出しちゃだめだよ。
だってまだ、龍生くんは「思い出」じゃないもん。
私の中ではまだ別れてないもん。
だって。
まだ、こんなにも好きなんだよ?
私はモヤモヤした気持ちを抱えながら、ショッピングモールを出て、駅の方へ歩き出した。
もうすっかり日が沈んで、街の灯りが目に優しい。
帰らなくちゃ。
あんまり遅いとお母さんが心配しちゃう。
その時、背後で笑い声が聞こえた。
私の好きな、あの笑い声。
振り返っちゃだめ。
このまま帰ろう。
必死で前を向こうと自分に言い聞かせていたのに、私は振り返ってしまった。