「別れようって……、急に言われても」
喉の奥から声をしぼり出した。

「他に好きな人がいるんだ」


「……え?」


「まだ好きだって伝えてないけど、そのうち……」
「やめて」
龍生くんの言葉を遮った。
意外と大きな声が出て、自分でもビックリする。


「ごめん」

龍生くんは頭を下げて、それから私を見ないまま中庭からさっさと出て行ってしまった。
まるで私なんか最初からいなかったみたいに。


遠くのほうで他の生徒たちの話し声が聞こえる。

ひとり取り残された中庭で、ぼんやりと足元をただ見つめていた。