一月十五日。
 安田さんからメールが届いた。
 今朝、無事に男の子を出産したそうだ。
 純平と相談して、今度の土曜日にお祝いに行く事になった。
 男の子かぁ。
 きっと可愛いよね。
 
 会社に着き、更衣室でめぐみと奈々美にも報告。
 二人も、とても喜んでいた。

「わたしと純平、今度の土曜日にお祝いに行こうと思ってるの」
「土曜日?」
「奈々美も行く?」
「何時頃行くの?」
「一時頃かな。面会は午後からみたいだから」
「あのさ、土曜日の夜って空いてる?」
「うん、夜は予定無いけど」
「めぐみにはさっき話したんだけど、わたし明日籍を入れに行くの」
「本当? でもまたどうして明日?」
「彼の誕生日なの。その日にした方が覚えやすいかなって」
「そうなんだ。おめでとう。これで正式に夫婦ね」

 奈々美は、三人で忘年会をした日の翌日から彼と同棲を始めた。
 忘年会の後、まどかちゃんを迎えに行って結婚の話を受け入れると、そのまま一緒に暮らそうという事になった。
 元のアパートもすぐには解約出来ないのでそのままにしていたが、元々荷物の少なかった彼女だ。
 すぐに移り住む事が出来た。
 籍は入れていなくても、誰が見ても夫婦以外の何者でも無かった。
 子煩悩な彼は、良くまどかちゃんを公園に連れて行っていたし、ベビーカーを押してる姿も見た事があった。
 横を歩く奈々美も幸せそうで、こっちまで幸せになれた。

「それで、仲間内で食事会でもと思って、土曜日の七時に予約入れたの。清美、来てもらえるかな?」
「もちろんよ」
「椎名さんも、大丈夫?」
「大丈夫よ」
「良かった。それじゃ、詳しい場所はまた後で知らせるね」
「うん」

 良かった。
 奈々美、これからはもっと幸せになってね。
 
 土曜日。
 予定通り午後から安田さんと赤ちゃんに会いに行った。
 こんなに近くで、生まれたばかりの赤ちゃんを見るのは初めてで、その小ささに驚いた。
 テレビとかでは見た事はあるけど、実際に見ると想像以上に小さい。
 安心しきって眠っている姿に感動した。

「安田さん、本当に可愛いですね」
「でしょー。特にうちの子はね」

 出た。
 親バカ発言。
 でも、みんなこうなっちゃうんだろうな。
 優しい眼差しを向ける安田さん。
 最初の頃、怖いと思っていた人とはまるで別人だ。
 人って、先入観で決めつけたらダメだね。
 だって、安田さんすごく良い人だった。

 わたしと純平は、十五分ほどしてその場を後にした。
 可愛い赤ちゃんが見られて幸せだった。

 純平が運転する車が駐車場を出た。
 今晩は、奈々美にも誘われている。
 今から、そこへ持って行くプレゼントを買いに行く予定だ。
 何がいいかな?

「安田さんの赤ちゃん可愛かったね」
「そうだね」
「赤ちゃんって、あんなに小さいんだね。驚いちゃった」
「奈々美ちゃんのとこのまどかちゃんも、少し大きくなってから見たしね」
「まどかちゃんも可愛いけど、赤ちゃんはもっと可愛いね」
「清美」
「うん?」
「無理してるんじゃないか?」
「何を?」
「子どもの事、気にしてるんじゃないか?」
「わたし達の?」
「ああ」
「ううん。わたしね、奈々美から教えてもらったの。わたし達は今を生きてるって。生きている事が素晴らしいんだって。だからね、子どもが授からなくても悲しむ必要は無いんだって思えた」
「そうか」
「わたし、これからの人生、純平がいれば大丈夫。それに、いつか赤ちゃんに恵まれる日が来るかもしれないしね」
「清美、俺もお前がいてくれて良かった。幸せだよ」

 じんときた。
 わたしが、こんなわたしでも、純平を幸せに出来るんだと思うと、最高に嬉しい。

 午後七時。
 奈々美達の結婚記念パーティに行く。
 パーティといっても内輪だけのお食事会。
 それでも素敵な会だった。
 奈々美の幸せそうな笑顔。
 こんなに輝いている姿、久しぶりに見たかな。
 旦那さんも、会うたびに素敵さを増してくる。
 本当に良き旦那さん、良きお父さんだ。
 結婚おめでとう。