こうして。

祐太郎に焼肉屋に連れていかれ。

個室で。

白いタンクトップの上に紙エプロンを着けた祐太郎が、肉を焼いている。

「ちゃんと、食え! 食って鍛えて筋肉つければ元気になっから」

「……」

食べる気力がない。

でも、遠まわしに祐太郎が自分を元気づけてくれているのだろう、というのはわかった。

「シン、話してみろよ。何があったか」

「…うん」

祐太郎は焼けた肉をすぐさま口にほおばる。

「アヤに会ったよ」

「アヤ? どちらのアヤ?」

じゅうじゅうと肉が焼ける。

焼けた肉をまた、すぐに祐太郎はタレをつけてほおばる。

「俺が、昔・・・結婚するはずだった・・・」

「あ? 結婚ってお前。すっげー昔じゃなかったけ?」

「うん。8年前」

祐太郎は食べる手を止めた。

「アヤ、結婚したんだって」

正直に話すと。祐太郎が眉間にしわを寄せた。

「おまえ…ずっとその人のこと引きずってたのか?」

「……」

「8年引きずって、結婚されて落ち込んでるってことか」

「…違うと思う」

俺はポケットからスマホを出して、1枚の画像を見せた。

「誰、この子? 随分と若いけど」

祐太郎がスマホをじっと眺める。

「前、一緒に働いていた子」

祐太郎はスマホを俺に戻して。

トングをつかんで。再び肉を焼き始める。

「あれか、この子が好きなのか?」

「…わからない」

「わからないって。この子に彼氏出来て落ち込んでんじゃねーの?」

「…わからない」