五分休みの移動教室は嫌い。
柚季は、忘れたノートを持って小走り中。
美術室へ急いでいる柚季の前方に、
五十嵐たちがいた。
急ぎもせず、ゆっくり歩いてる。
余裕だな。
余裕すぎて、いっつも先生に怒られるくせに
焦ってたこっちがせっかちな人みたい。
「アイツ、うざいんだけど。嶋田」
大きな声が聞こえた。
だるそうに教科書を振って、
クラスメイトの柳田が言う。
「なに。お前も怒られたん。何したんだよ」
別の男子が言う。
「関係ねえのに、人のイロコイに
首突っ込んできやがって。
おせっかいすぎんだろ。近所のババアか」
「マジうぜえよ。あんな性格じゃ男なんて
絶対できねえ」
「な。五十嵐」
当たり前のように、柳田が五十嵐に話を振った。
ほら、私が頑張ってみたって、恥かくだけなんだよ。
だって、もとから嫌われてるんだから。
自分を守るように、
胸の前で抱えるノートを持つ手に、力がこもる。
五十嵐の口から聞くのは
きついよ