ひょい。
五十嵐が差し出した柚季の手をかわす。
え。
五十嵐が真顔で見つめてくる。
「お前俺が好きなの?」
感情の読みとれない声で五十嵐が言った。
「な、何言って。誰があんたみたいなヤツ。
好きなわけない」
焦って、恥ずかしくて、
つい いつもの憎まれ口が こぼれる。
だって、恥ずかしいよっ。
直球でそんなこと聞いてくる?
「ふーん。」
すねたような表情の五十嵐
「じゃあ、何でこっち見ねえの」
「シカトされっぱなしで、むかつくんだけど」
シカト?
シカトなんて、そう思ってたの。
そっと、五十嵐を見る。
「そんなつもりじゃ。ごめん」
五十嵐と目が合う。
真っすぐ見てくるから
気恥ずかしくて、またすぐそらしてしまう。
廊下の遠くで、ドアの開閉音が聞こえる。
静かな雨音とにおい。
五十嵐がどんな顔してるかわからないよ。