「見て」
柚季が眼下を指す。
「憧れたりしない?」
「あんな風に お互いが思いあってて
自分が大好きな人に好きになってもらうとか、
いいなーって思ったりしないの?」
自分が羨ましそうに柚季が言う。
夢見がちな表情の柚季のそばに立った
五十嵐が、あほくさそうに言った。
「お前さあ、こん中で何人が卒業後も
付き合ってると思う?」
「卒業まででもいいけど。
さらに結婚までって言ったら?」
柚季の横から中庭で、
仲良さそうに笑いあうカップルを見下ろして
五十嵐は言う。
「一生一緒にいようね。とか言って。動画挙げて。
数か月経ったら、たいてい終わってるよ」
「そんな気持ち一つで終わるもんに、
真剣になるの、無意味じゃね?」