「ゴォーラーッ。 五十嵐ぃっ」
昼休み。
理科準備室の扉が、音をたてて開いた。
いつものように、椅子にジャージで寝床をつくり、
食後のひと眠りをしていた五十嵐が、
寝ぼけまなこで目をあける。
「お前の身内以外の女はいねえのかよ」
五十嵐がため息をつきながら、起き上がる。
「だれ?」
不機嫌そうにたずねる。
「西校のゆかちゃんだよっ。」
「何でそんなに、顔広いんだよ。握力ゴリラ」
うなだれて、五十嵐が言う。
「あんたのせいで、こっちだって泣きつかれて
困ってるの」
「脳内タンポポ!フワフワ、フワフワしやがって」
こどもみたいな悪口で言い返してしまう。
「めんどくせぇなぁ。もう」
はぶてる五十嵐に、柚季はあきれて思う。
いい加減。どうにかしてほしいのはこっちだよ。