その日の帰り道は三本と帰っていた。

「……久しぶりだな。」
「ええ。」

私たちは陽の沈んだ、藍色の空の下を歩く。

そして、ある場所で立ち止まった。

「…ここだったね。」
「塀が壊れていること以外は、なにもなかったみたいになってるな。」

2週間前、事故があった場所。

地面に流れていた血も、倒れた自転車も、何もかもが元通り。

でも、あの日の光景は目の前に浮かんでくる。
私は、怖くて、寂しくて、後悔が広がって、座り込んだ。

自然と溢れてきた涙を拭って、私は横にしゃがみこむ三本に話しかける。

「私が、いなければ…川崎は、死ななかったのかな…」
「…そうかもしれないな。でも、多分、天はこう思ってると思う。」

「信条を助けられてよかった、って。」

その言葉だけで、また涙が止まらなくなる。

いつも、私を助けてくれた川崎。
最後まで、私を守ってくれた。

私は、最後にお礼とお別れを言いにいかなければいけない。

「…川崎の家ってどこだっけ。」
「3丁目のピアノ教室わかる?その3つ隣。」
「ありがとう。」

私が言うと、三本は微笑んで頷いてくれた。