私が

頼んで見せてもらった本

だったから、

何か話さなくちゃと思った。



「んー。
別に、英語好きでもないんだけど、

最近
必要になってきちゃって。

洋書を読むって
最初は抵抗あるかもしれないけど、
慣れればけっこういけるよ。」



彼は軽く言うが、

私にはハードルが高い。



この先、

洋書なんて一生

読まないだろうなぁー。



そんなことを思っていたら、

今度は彼から質問された。




「本が好きなんだね。
この図書館には、よく来るの?」




「あ、いや。
私、隣町のN市に住んでいるので。
夏休みだから、
ちょっと遠くへ行こう
ってことで来ました。」




私は、恥ずかしくなりうつむく。



「え?N市?」と、

彼のびっくりする声が聞こえた。




はて?

N市がどうかしたのだろうか。




「学校どこ通ってるの?」




も、もしかして、これがうわさの

ナンパ?!?




そんなわけないか。

と思いつつ、変な声が出てしまった。



「へ?学校?」




「うん。学校。」




「け、県立桜場高等学校です...けど...?」




「ふーん。じゃあさ...、」


彼が、

次に何かしゃべろうと口を開いたとき、

遠くで、

誰かを呼んでいる声がした。




「あ、ごめん。そろそろ行かなきゃ。」



まるで、

その声が聞こえたからなのか?

というタイミングで

彼は、いきなり立ちあがった。



「今日は、
ここに来て良かったよ。
君に会えた。
じゃ、またね。」


と言って、また

分厚い本を抱えて、

去っていった。




ひとり、取り残された私は

今までの状況が飲み込めず、ポカーン状態

本当に何だったんだ?



暑いけど、

図書館に来て

本読んでたら

知らない人の本に見いってて、

笑われた。



うーん。

よくわからない。



まあ、

もう一冊くらい

本読んでから帰ろう

そんなとき、




「バカ。
お前、
そんな重い本、持つなよ!」




「えー。

別に大丈夫だって。」





という声が

私の耳に聞こえてきた気がした