選んだ本を一通り読み終わったところで

私は、本を棚に返そうと思い、

椅子をゆっくり後ろに引いた。

ふと横を見た。


さっきの人がまだいる。

真剣に本を読んでいる横顔が

すごくきれいだ。


メガネをかけていて、

一見、大人びて見えるが、

もしかしたら

私と

あまり年が変わらないのかもしれない。


なんとなく、そう思った。




机の上には、相変わらず

分厚い本が積んである。


表紙の色からして、ずいぶん難しそうな本だ。


どんな内容なんだろう。



本好きとしては、

自分の知らない本があると

気になってしまう。



そのとき、どこからか

「そんなに見られると読みにくいな~。」

っと、ボソッと呟く声が聞こえた。


誰?



キョロキョロしてみる。

今は、来たときより

いつの間にか、だいぶ人が少なくなり、

私の机の周りには誰もいない。



「クク、クックッ...。」まただ。


小さいけど聞こえる。

今度は、笑いをこらえているような?



一体、どこから...?

私は、本を戻しに行くのも忘れて

キョロキョロと、

挙動不審になっていると、


目の前の大きな本が動いた


「もう、無理。笑いすぎてお腹痛い...。」



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