「!!!」
僕は跳ね起きた。
やはりここは森だ。
「夢か...」
寝起きだからか、力の入らない僕は木に縋るようにして立ち上がった。
「まずは、歩こう」
どこへ進めばいいか、何の手掛かりもない僕には、この時間も無駄には出来ない。
僕はひたすらに歩き始めた。
足が疲れたら休んで、なんとか歩き続ける。
どれくらい経ったのか?
闇に包まれた森の奥に、うっすらと光が見えてきた。
高鳴る気持ちを抑えて、着実に一歩ずつ近づいて行く。
「よいしょ、...」
あと少しというところで、僕は休憩を取った。
火照った体を風で涼ませる。
そろそろ行こう。
立ち上がろうとしてふと前を見ると、数メートル先に琹が居た。
栞への怒りから家を飛び出したことなんて忘れて、僕は栞に見とれていた。
楽しそうに花に水をやる琹はすごく美しくて。
惨めな僕と同じ人間だとは思えない程だった。
数秒琹を見つめていると、急に様子がおかしくなった。
苦しそうに息をし、胸を押さえている。
僕は思わず琹の元へ駆け寄った。
琹は僕に気付いているのだろうか?
何かを呟き始めた。
「ごめんなさい、っ...稜ちゃ...ゆ、るし、て...」
倒れ込む栞が放った言葉を理解した時、僕はハッとした。
何も言わず、何も考えずに琹を抱き抱え、精一杯の力で僕は走り出した。