「......」
僕は、琹の先生と二人にして欲しいという要望から、病室の前の椅子に座っていた。
頭の中には、〝茅野琹〟という名がぐるぐる回っている。
先生と話している最中に、スラスラと出て来た名前。
これは間違いなくあの〝琹〟のフルネーム。
僕が彼女の名を知っている確率は、ほぼゼロに近い。
だって僕は彼女のことを知らないから。
出会ったことがないはずだから。
でも、僕にはそうとも言いきれない気がしていた。
目には見えない、大きな繋がりがあるんじゃないか?
僕は見つからない答えを探して、ひたすらに考えを巡らせていた。