それから暫くして、時刻はもう午後七時になった。
まだ季節は春だけれど、七時にもなると流石に空は暗さを増してくる。
面会時間はもうあまり長くない。
「ハァ、」
今日はもう話せないのか、僕は落胆した。
そして、一番大切なことに気付いた。
〝寝床が無い〟ということ。
今日も野宿か。そう思ったとき。
「......んっ、」
掠れた声が聞こえた。
「琹!!」
僕が琹の方を見る。
すると琹は、笑顔を作っていた。
「ありがとうっ、運んでくれて。」
その声は、なんだか切なかった。
僕は立ち尽くしていた。
「先生、呼んできてくれる、?」
聞きたいことは腐るほどあったが、優しく微笑んで言う琹に、異論は言えなかった。
「分かった。」
僕は一目散に先生を探しに行った。