「雪乃ちゃんは、今日からしばらくお休みです。
」
「そうなんだ。」

優しく声をかけられて、よろりと体が揺れる。

「はい、雪乃ちゃんのお姉さんが結婚のために、ハワイへ行ってるんです。お姉さんは、海外ウエディングが夢だったみたいで、家族で1週間行ってるんです。」

「だからここに来たんだね」

「はい、本当は結婚式だけで帰ってくる予定だってんですけど、せっかく行くからって家族旅行を兼ねて行ったので長いんです。」

「じゃあ、しばらくひとりでご飯食べるんだ。」

「はい、雪乃ちゃんのお姉さんが、明日結婚式をあげるので、出勤するのは来週の木曜です。」

「はは、ここでずっと会話してると、雪乃ちゃんの事、知り尽くせそうだ。」

少し困った様に微笑む顔に気がついて、どっと汗が吹き出てきた。

あ、私、雪乃ちゃんの個人情報をダダ漏れにしちゃった。

ごめんなさい、雪乃ちゃん。

せっかく、高梨さんが話しかけてくれてたのに、何話してるの私。

気の利いた事をひとつも話せてないよ。
こんなんじゃ、呆れられてしまう。

情けなさに、ぎゅっと目を瞑ると、両肩に手を置かれ、くるりと方向を変えられた。

「僕も1人なんだよね。あかりちゃんさえ良ければ、一緒に食べてくれない？
大勢の中で1人は気遅れるから、どうしようかと思っていたんだ。」