「あっ……友也、ね。実はね、今日はおらんとよ」

いない……。

そりゃ最近の友也のスケジュールは把握できてないし、休みだからって家に居るとは限らない。

「友也、今五年生の担任しとるやろ。夏休みに入ってすぐ宿泊学習のあるとって。それで登山とかの下見に行っとるとよ。事前にシミュレーションしてみる必要のあるけんって。ほら、そろそろ梅雨に入るたい。雨の降ったら登山とかされんけん今のうちにってことらしかけど、タイミング悪かねもう……」

運動会が終わるまでは忙しいだろうと遠慮していたけど、考えてみれば先生っていつでも忙しそうだったよね。

自分の忙しさで、友也の生活にまで気が回らなかったのかもしれない。

私と友也の距離はこのままでは遠ざかる一方だ。

「そしたら帰って来るとは何時ごろかな」

登山とかしてくるんだったら疲れて帰って来るだろうな。

そんな時に押しかけていいのかな。

でも私には時間がないから、どうしても今日友也と話したい。

「それがね、明日美ちゃん……。今日は泊まりやけん、帰らんとよ」

あ……そうなんだ。

宿泊学習のシミュレーションなんだもんね。

勢いで突撃したのが間違いだったのか。

まさか運動会の翌週に泊まり掛けでいないとか、考えられなかった。

「明日の帰りは……」

「はっきりとは聞いとらんとけど、昼過ぎか夕方くらいやろか。明日帰ったら明日美ちゃんに連絡するごと言おうか?」

いや、それじゃ多分間に合わない。

間に合ったとしても、話が出来る時間なんてないだろう。

「あのね、おばちゃん。私明日から……」

何を言うつもりなの私。

お母さんに口止めしていたのに、私の口から言える訳がない。

「あ、そうか。もしかしてまた明日から行くと?出張」

…………なんで。

私の出張のこと、おばちゃんが知ってるの。

「お母さん、やっぱり言うたとね。もう……」

「ごめんね明日美ちゃん。私が無理矢理聞き出したとよ。だけんお母さんば怒らんでね」