「まぁまぁ。よっぽど嬉しかったのね」


「はぁ…はぁ…ったく」



あいかわらず変わっていない。



俺の父親の山村仁史(やまむらひとし)は
家で小さな診療所を経営している。



近所では有名で子供達に人気の診療所。



そして母親の緑(みどり)は
そこで看護婦をしている。



まぁ、俺が言うのもなんだが
めちゃくちゃラブラブの夫婦。



まぁ、いいことだけど?



「あっ、もう香奈さんと克樹さんと
アニキは来てるぞ?」



「そうか。じゃあ行こうか母さん」



「はい」



うちではレディーファーストが原則。



何をするのもおふくろが一番だった。



今だって一番にロビーに入るのは
おふくろだし…。



「あっ!お父さんお母さん」



一番に見つけて礼をする香奈さん。



「あっ。これは山村さん。
お久しぶりです」



「あらあら。香奈さん。
この前よりますますきれいになられて。
本当にうちの光太になんかもったいない
くらいのお嬢様ね?」