「あの、智紘先輩…」

「…。」

「智紘先輩?」

「…。」


中庭へ来たはいいものの、ブスッとしたまま一言も喋らない智紘先輩の纏うオーラがいつもと違って、かなり気まずい…。


紬ちゃんに連絡しても『応援してるよ』なんてわけのわからない返信が来たりするし……

チラッと先輩を見てみてもムスッと頬杖をついたまま微動だにしなくて、いつもの先輩からは想像もつかないくらい静かすぎる。


どうすればいいのか分からなくて俯きたくなったその時、ハア…と目の前からため息が聞こえた。


「ねぇ、春香ちゃん」


先輩の声にビクッと肩が上がる。


「な、なんですか…?」

「どうしてあんな状況になってたの」

「えと、それは…」


ど、どうしよう…。

でもここで黙ってても智紘先輩は納得しないだろうし。

そう思ったわたしは仕方なくほんとのことを話すことにした。