「ほら。春香ちゃんだって邪魔だっつってんじゃん」
それなのになぜか大和先輩は手を退けてくれる気配すら見えなくて困惑していると、うしろから一瞬「…チッ」と小さな舌打ちらしき音が聞こえた。
その瞬間、グイッと腕を引っ張られて「わっ!」と声を上げると、ポスッと何かに受け止められたわたしの身体。
「───智紘 先輩…」
背中に密着した先輩の胸板が結構がっしりとしていて、そこから伝わってくる熱がわたしに伝染して身体中が熱くなる。
うわぁ、やばい……。
そんなわたしなんてまるでおかまいなしに、智紘先輩は大和先輩を真っ直ぐ見てこう言った。
「俺、大和にやる気なんてねぇから」
いつもより荒々しい言葉づかいで、そう呟いたあと、わたしの腕を掴んだまま中庭のある方へ歩いて行く。
その時、見た大和先輩と紬ちゃんの表情は、なぜかニヤニヤと笑っていた───