静寂な時間が過ぎる中、ザッザッザッ、と草を踏む音が渡り廊下に少しずつ近づいて来る──



「ったく。あいついきなり呼び出すって何事だよ──…って、何してんの?」


その時、聞こえた声は間違いなく聞き覚えのある声なのに…

振り向いて顔を確認することができないのは、大和先輩の手が頭に置かれたままだから。


「聞いてんの? 大和」

「何でひろが怒るんだよ」

「は?」

「べつにお前のじゃねぇだろ」


わたし越しで話すのはやめてほしい…。

板挟みにされてかなり気まずいというか、何の話をしてるのかさえよく分かっていないのに…


「とりあえず手を退けろよ」

「やだ って言ったら?」


な、なに。このバチバチな感じ。

───って、そうだ…!


「や、大和先輩。…そろそろ手を退けてもらって、いいですか…?」