目の前にいるのは智紘先輩なのに
いつもと違って見えるのは纏っている雰囲気が少し違うような気がするから…?
でも、そのわけを知らない。
わたしそっちのけで先輩は話を続ける。
「春香ちゃんを他のやつに渡す気なんて、俺、さらさらないから」
「あ、の……ち、智紘先輩?」
わたしの声は今の先輩には届いていない。
その瞳で何を見ているのか
何を感じているのか
全然、分からなかった。
その時、ふわりと風が舞い、わたしの髪を攫っていく────
「春香ちゃん。俺、一度狙った獲物は逃すつもりないんだ。───だからさ、覚悟しといてよ」
その時の言葉の本当の意味を知るのは、もっともっとあとになる。