「まったく話の聞かない連中だ。仕方がない。
行け。お前達!!」

陛下が、そう言うと兵達が一斉に弓を放った。
お互いに攻防戦が始まった。
私が影近に連れて来られ陛下の前に現れた時は、
まるで戦場だった。

「ルチア様!?リュウ様も……」

「アイリス!?無事か?」

囚われながらも私が陛下の名を呼ぶと
私に気づいてくれた。しかし影近は、
それを許さない。

「よくここが分かったな。
だが残念だ。我々は、このまま国を出て故郷に帰る」

「そんなことさせるか!!」

私が国を出ることを拒んでくれた。
嫌だ……離れたくない。
私は、陛下と一緒に居たい。

「何故止める?アイリスは、元々東洋の人間だ。
国に帰るだけのことにお前らが止める権利はない」

影近は、そう言ってきた。
その言葉を聞いて胸がズキッと痛んだ。
私は、ギルスの人間じゃない。
そう突き放されているみたいで悲しかった。
私は、ここに居たらダメなの?
もう二度と陛下のそばに居たらいけないの……?

「言いたい事は、それだけか?」

「……はぁっ?」

「言いたいのは、それだけかと聞いている。
東洋の人間……?それがどうした。
アイリスは、アイリス。どの国だろうが関係ない。
俺が欲しいのは、アイリスと言う名の
17歳の女の子だ!」

陛下は、そう言い返してくれた。
私を否定するのではなく私を私として見てくれた。
その言葉は、ドレス製作の時にも同じ事を言ってくれた言葉だった。陛下……。