しかし、気を付けないとならない。
忍びは、確かにギルス内をうろついている。
陛下の命を狙って……。だとすると私は、もっと
気を引き締めて陛下を守らないとならない。
今まで中途半端だったからいけなかったんだわ。
騎士の名に恥じないような生き方をしなくちゃあ!!
私は、改めて決心をした。だが……肝心な
陛下は、自分の命が狙われているのにも関わらず
気づくと姿を消していた。
もう何で、いつもいつも少し目を離した隙に
何処かに行ってしまうのだろうか。
私は、必死になって国王陛下を捜した。
万が一忍びに隙を作らせ陛下の身に何かあったら
大変だ。他のメイドに聞いてみると
「あぁ、ルチア様なら
厨房の方に行かれるのを見たわよ」
「厨房……?」
陛下が厨房に何の用なのかしら?
取り合えず私は、慌てて厨房に向かった。
何処で忍びが変装をしているか分からないし
陛下の命を狙ってくるか分からない。
警戒しながら厨房に入ると驚くものが飛び込んできた。
「ルチア様……何をなさっているのですか!?」
陛下は、厨房のキッチンで
生地を叩いて何かを作っていたからだ。
あれは、パン……?
「見て分からんか?おやつに食べるパンを
作っているんだ」
いやいや。何を作っているって問題ではなく
何で陛下というお方がパン作りをしているのよ!?
異様な光景に私は、驚いてしまった。
「この生地を練るのは、ストレス発散になって
丁度いいんだ。待っていろよ……アイリス。
もうすぐ美味しいパンを食べさせてやるからな」
国王陛下は、張り切りながら
パンを思いっきり叩きつけていた。
いつも自由奔放のお方がストレスって発言をするのも
驚きだが……えっ?陛下って……パンを作れるの!?
意外な特技に私は、驚かされた。
それから1時間後。
ホクホクで美味しそうなパンが本当に出来上がった。
「お、美味しい……」