心地のいい大人の女性の声だった。
その声を聞くと不思議と落ち着きを取り戻せた。
何だか母に励まされたような不思議な声だった。
でも勇気が湧いてきた。
私は、目を開けるとそのまま幸正に向かって行く。

「ふん。大人しく私について来い」

幸正も構わず突っ込んできた。
私は、負けない!!陛下のためにも
地面を蹴ると左右に回るように高く飛び上がった。

「伊賀奥義。桜吹雪の舞い!!」

高速に舞うと何処からか強い突風が起きた。
すると葉や砂が美しい桜の花びらのように変わり
幸正の視界を奪った。一種の幻術だ!

「くっ……これは、紅葉の!?」

よし。今だ!!
私は、着地をするとそのまま
短剣を振るい幸正を切り裂いた。

「ぐわっ……!?」

切られた幸正は、倒れた。
私は、息が上がる。どうやら成功をしたみたいだ。
当主が倒れたため戦場は、静まり返った。

「幸正様!?」

甲賀の忍び達は、すぐに驚いて騒ぎだした。
私は、ホッとしたせいなのかふらっと
倒れそうになった。

「アイリス!?」

陛下がすぐに駆け付けてくれた。
そしてお姫様抱っこしてもらう。
すると切られて倒れていた幸正が咳き込んでいた。 

「ゴホッ……まさか。
紅葉がもっとも得意とする術で負けるなんてな」