陛下の剣は、弾き返されて宙を舞うと地面に落ちた。
幸正は、陛下に剣を向けて突き刺そうとしていた。
陛下が危ない!!

「伊賀と共に滅びよ!!」

「ルチア様から離れろ!!」

私は、それを防止するため短剣を幸正の手に
向けて投げた。幸正は、すぐに避けたが。
私は、次の短剣を太ももから抜き取ると
幸正に向かって攻撃をした。
だが素早くバク転をして避けられてしまった。
なんて素早っこいのだろうか。

「アイリスと言ったか?紅葉の娘。こちらに来い。
お前だけは、助けてやる。私と一緒に甲賀に行くぞ」

私を甲賀に来るように誘ってきた。
……冗談じゃない。
誰が、甲賀に行くものか!!

「私は、ギルス大国の騎士です。
あなたのところには行きません」

私は、キッパリと否定するといつでも
攻撃が出来るように構えた。
これからもずっとギルス大国で陛下をお守りしたい。
それが私の願いだ。

「ほう……お前も紅葉のように私に逆らうのか?
いいだろう。嫌ならば、無理やりにでも
連れて帰るだけだ。二度と離れないように」

そう言うと幸正も剣を構えた。
さすが甲賀の当主なだけはある。
他の忍びや今までの敵以上に隙がない。
普通の戦い方をしても負けてしまう。
カマイタチでも……難しいかも知れない。
だとしたら残りは……。

まだ未完成の術しかない。
カマイタチの術は、体術を応用した術だったから
私にも出来たけど……これは、出来るだろうか?
しかし今は、やるしかない。

私は、目をつぶると意識を集中させる。
心を落ち着かせようと精神統一させた。
緊張で心臓がドキドキと高鳴っているのが分かる。

大丈夫。私は、出来る。 
自分で何度も言い聞かした。
すると何処からか声が聞こえてきた。

『大丈夫よ……アイリス。
自分を信じて。あなたなら出来るわ』