「紅葉……良かった。生きていたんだな?」

まだ母と間違えて生きていることに喜んでいた。
どうやら母に似ている上に同じ服装だから
勘違いをしているようだった。

「違います。私は、服部紅葉の娘。
アイリスと言います」

私は、自己紹介をした。
すると幸正という男は、驚いた表情をしたあと
眉をひそめた。不機嫌そうになる。

「紅葉の……娘だと!?」

「はい。母は、ギルス大国で私を産んで
守るために孤児院に預けました。母は、死にました。
だから私は、母ではありません」

この人が母の事を愛していたんだ?
死に追いやったと思い伊賀を憎むほどに……。
それを聞いた幸正って人は、
さらに怪訝そうな表情になった。

「紅葉か、異国の地で他の男と恋をし
子供を宿したと聞いていたが……まさか
貴様が、その娘だとは……」

「はい。この度は、母の勝手を
申し訳なかったと思っています」

話し合いで解決が出来るのならそうさせたい。
しかし一度亀裂が出来た穴は、
そう簡単には、塞がらないらしい。

「アイツ……紅葉は、私を裏切った。
本来なら異国の男ではなく私と一緒になるはずだった。その上自殺をするなんて……それも全ては、
異国に行かせたからだ!!」

綺麗な顔立ちが歪むほどに怒りをあらわにしていた。
祖父の言う通りに母を愛するが故に
伊賀に怒りを示していた。

「待って下さい。それは、逆恨みと言うものでは
ありませんか?確かに母は、異国で恋に落ちた。
でもそれは、母が本気で好きになった人で
あなたではなかっただけです。
誰が悪いとかではなくて……どうしても
譲れなかったんだと思います」

母は、どんな風に父に出会い惹かれたか
分からないけど、きっと恋に落ちる瞬間は、
皆一緒だと思う。愛しくて
胸がギュッと締め付けられるぐらいに切なくなって
この人ではないとダメだと想うの。それが恋だから